教室の授業でも、依頼された講座でも、LINEの人気は高く、皆さん熱心にお話を聞いてくださいます。
そんな中で「子供には聞けません。すぐ怒られちゃうから」という言葉をよく耳にします。
シニア世代の方から、本当によく聞く言葉です。
逆に、私の友だちや同世代の人からよく聞くのが「親に教えると、なぜかケンカになる」という話。
「増田さん、よく気長にやってるよね」「俺はダメだわ、すぐイラっとしちゃう」
「由紀ちゃんみたいに優しく教えられればいいけど、なかなかねえ」「優しく教えるとか無理」とかそんなことをよく聞きます。
私は2000年から、シニア世代の方にパソコンやスマホをお教えしています。これまでにご縁のあった方は1万5000人を超えました。その中で、双方から聞くこの話は、昔も今も変わりがありません。
しかもそれは、たいてい操作の説明の手前の話です。
これから、シニア世代の親御さんにLINEを教えるための記事を、何回かに分けて書いていこうと思います。
友だちになる方法、メッセージの送り方、無料通話、グループ、写真。ひとつずつ、順番に。
この連載は、著書『世界一簡単! 70歳からのLINEの使いこなし術』(アスコム)をもとに、教える側であるお子様世代に向けて書き直したものです。
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でも、その前に。
今回は操作の話をしません。急がば回れで、ここを飛ばすと、たぶんうまくいかないからです。
質問してくれる今が、いちばんのチャンスです
「イラっとしちゃう」というお子様世代の方にいちばん伝えたいこと。それを先に書きます。
親御さんが「これ、どうやるの」と聞いてくる。
最初は優しく答えてあげようと思う。でもまた同じことを聞いてくる。それも何度も。
正直、うんざりする日もあると思います。
「前にも言ったでしょ」と言いたくなる気持ちも、「ちゃんと書いてないからでしょ」と責めたくなる気持ちも、「もう、こっちだって忙しいんだから」と突き放したくなる気持ちも・・・わかります。
でも、聞いてくれているうちが、チャンス。と言いたい。
現役世代のお子様にとって、親がスマホを使えるようになっていることは、とてもメリットのあることです。離れて住んでいたらなおさらです。
日常から、親の日頃の様子がわかる、いつでもコミュニケーションができる、写真を難なく送れるようになっている、というのはとても大事なこと。
それを叶えてくれるのがLINEです。
LINEだけは自由に使えるようになっておくといい。
それを、「どうせもう使えないから」「どうせ覚えられないから」「どうせ無理だから」とあきらめてしまい、質問すらしてこない人に、「スマホが使えないと困るよ。LINEぐらいできないと困るよ」といくら言っても、もう一度やる気になってもらうのは、本当に本当に難しいのです。
一度「もういい!」となってしまった方が、また触ってみようと思うまでには、ものすごく時間がかかります。何かきっかけがないと難しいです。年齢が進めばなおさらです。
だから、何度も聞かれてうんざりする状況は、実は(まだ)恵まれている、と考えてみてください。難しいかもしれないけど。
それでも「覚えよう」としてくれている姿勢の表れ、と捉えてみてください。
親がスマホを使えるようになることは、将来の自分のためだ、と強く言い聞かせて、怒りたい気持ちをちょっとこらえてみてください。
「使いこなす」を、勘違いしていませんか
よし、じゃあ質問には徹底的に付き合ってやろう!と意気込んで、親御さんに教えるときに、気を付けた方がいいことがあります。
それは「使いこなす」を勘違いしないこと。
多くの方が「使いこなす」とは、何でもすらすらできることだと思っておられるかもしれません。
でもシニア世代の「使いこなす」は、そうではないと思ってください。
張り切って、親に全部教えようとしてしまうのです。あれもできる、これもできる、と。
でも、私が考える「使いこなす」は、こうです。
1)自分のやりたいことが
2)自分のペースで
3)自分ひとりでできること
この3つがそろっていれば、もう十分「使いこなしている」と言えると思っています。完璧である必要は、まったくありません。
1)自分のやりたいこと があること。
これをやりたい、ということを何か1つでもいいので見つけてほしい。親世代ご自身に。
もしどうしても見つからなかったら、親子双方でこれができていたらものすごく助かる、という内容を1つリストアップしてみてください。
親御さんにとって「やりたいこと」は、多分そう多くはないはずです。
「孫の写真が見たい」「近況を気軽に伝えたい」「誘いに返事をしたい」。全部で20も30もある機能を、覚える必要はないのです。
2)自分のペースで
急ぐ必要はありません。焦る必要もない。今日しなければいけない締め切り仕事ではないのですから、自分のペース、自分が覚えられるペースで覚えればいい。「LINEで写真を送る」だったら、自分のペースで何度でも練習して、ゆっくりでもいいので「次はここだったな」「こういう時はこうするんだったな」と覚えられればそれでいいのです。
3)自分一人でできる
やりたいことを、最終的には自分一人でできるのが目指すゴールです。いつも誰かの助けを借りてやるのではない。ノートやメモ、本を見てもいいから、自分一人でできること。
ものすごく優しいお嬢さんや息子さんだったとして、いつでも困った時にすぐに助けられることが、いいこととは限りません。困った時にすぐ駆けつけてくれる環境があることは、とても恵まれているとは思いますが、それでも「一人でできる」ということを重視した方がよい。
ずっと同じ環境で、ずっと同じように誰かがいつも手伝ってくれる、とは限らないのです。「自分で覚えてもらい、自分で手を動かしてもらい、自分でできるようになる」ことを手伝う方がずっといいと思います。
一人でできることは、自信を生みます。自立にもつながります。
いざという時に助けてくれる人が周りにいつつも、やりたいことは自分のペースで自分でできる。これが目指したいゴールだと、私は思います。
親のスマホを勝手に設定しない ― 遠回りでも、結局近道
ここは、忘れられがちなところです。
よかれと思って、親御さんのスマホの設定を、こちらで全部やってしまう。文字も大きくして、余計なアプリも消して、使いやすく整えてあげる。
「お母さんがさわるのはここだけだよ。そうすれば変なことにならないからね、わかった」とスマホを渡す。
その気持ちは、よくわかります。
講習会でもいらっしゃいます。「息子に、これとこれ以外は触るな、と言われてるんです」という方。
でも、勝手に変えられたスマホは、「自分のスマホ」ではなく「持たされているスマホ」になってしまいます。
そして、自分のものだと思えなくなった道具は、積極的には使われなくなります。
設定してあげるのは構いません。ただ、パパっとスマホを取り上げて、勝手にやらない方がいい。
×「ちょっと貸して、はい。これで使って。」
○「ちょっと設定、変えてもいいかな? どう変えるか説明するね」
一緒に画面を見てもらう。それだけでいいです。自分のスマホに「当事者意識」を持ってもらいましょう。
「わけのわからないうちに、何かが行われていた」というのではなく、「説明は覚えてはいないが、設定をいじって文字を大きくできるということは、なんとなくわかった。操作は息子がやってくれたけど」ということで構わないのです。
同じ理由で、こちらも。
×「ちょっと貸して。私やるから。」
○「私見てるから、友だちにLINEで写真を送るの、ちょっとやってみて」
代わりにやってあげると、その場は5秒で終わります。自分でやれば早い。確かに楽です。
でも、来週また同じ電話がかかってきます。それが続くと、「いい加減にして、自分でやってよ」となりかねません。早く覚えてもらっていれば・・・後になってからでは、お互いに苦労します。
「娘にやってもらえばいいか」「息子が帰ってきたときにお願いするか」。これも確かに楽。誰かにやってもらえば、自分は覚えなくてもいい。楽だから。
でも、来週また同じことを聞くことになります。それが続くと「またなの? もういい加減に覚えてよ」となりかねません。早く覚えていれば・・・教えてもらうとまた怒られちゃう・・・後になってからでは、覚えるのも一苦労です。
やってあげる、やってもらう。ではなく自分でやってもらう。自分でやってみる。
もしかしたら時間はかかるでしょう。でも遠回りに見えて、指を動かしてもらうのが一番の近道です。
親を、情報弱者にしないために
災害の多い日本。少し大きめの地震が起きるたびに、ドキッとすることも多いです。
災害のとき、情報がいち早く得られるというのは、どこに住んでいても、年齢がいくつでも、非常に大事なことです。
地震が起きたらすぐにテレビをつける習慣があると思いますが、停電したらテレビは見られない。テレビしか見ない人は、それで情報源を絶たれます。
家族に電話で安否を確認したい、と思っても電話が繋がらない状況では、電話という手段も絶たれます。
テレビで流れるのは、各地の様子ですが自分の住んでいる地域のことがいつ出てくるのかはわからない。最も知りたい「この地域の情報」は、テレビより先に、自治体のホームページやSNSに出ることがあります。避難所が開いた、水が出た、給水車が来る。刻一刻と変わる情報です。
テレビと電話だけが情報源だと、困ることがたくさんあるのです。情報に自力でたどり着けない、電話がかからないと安否が確かめられない。これでは困るのです。
スマホが使えたらこれらが解消できます。停電でもニュースが見られる。ネットが繋がっていれば情報が得られる。電話をかけなくても安否確認ができる。
できないのは、親御さんの能力の問題ではありません。やり方を知らないだけです。やり方さえ知れば、80代でも90代でも、ちゃんとご自分で情報を取りに行けます。安否確認ができます。
私の教室の最高齢は90代ですが、みなさん立派に使っておられます。
スマホが使えると、こういうことができます。
- 災害のとき、ボタンひとつで「無事だよ」を家族に伝えられる(「無事だよ」がボタン一つで。災害のときに役立つLINEの「安否確認」)
- テレビが消えても、ニュースが見られる(「テレビが消えたら」のために、スマホに入れておきたいNHKのアプリ)
- 電波が届かなくなっても、他社の電波を借りて通信できる(災害でスマホが圏外に!そんなときの新しい備え「JAPANローミング」とは)
親御さんにスマホを持ってもらう理由は、便利だからではありません。いざというとき、ご自分で自分を守れるようになるためです。ここが腹に落ちていると、教えるときの粘り強さが変わってきます。
なぜ、電話ではなくLINEなのか
「教えるのもめんどくさいし、連絡なら電話でいいじゃない」と思われるかもしれません。でも、LINEには電話にないよさがあります。
電話は、相手の時間をもらう連絡手段です。かける側も「今かけて大丈夫かな」と迷いますし、受ける側も「今出なきゃ」と身構えます。だからこそ、なんでもない用事では、かけにくい。
LINEなら、親御さんは思いついたときに送れます。こちらは手が空いたときに読めばいい。お互いのタイミングを邪魔しません。
そして「既読」です。返事がなくても、読んだことだけはわかる。これは、離れて暮らす家族にとって、思っている以上に大きな安心です。
料金の心配もいりません。LINEの通話はインターネットを使うので、どれだけ長電話をしても通話料は一切かかりません。国内でも海外でも同じです。「電話代がもったいないから」と切りたがる親御さんには、この一言が効きます。
それから、堅苦しさが要らないこと。LINEは「会話」の延長です。「拝啓」も「いつもお世話になっております」も要りません。頂き物をしたら「とってもおいしかったです、ありがとう」だけでいい。写真が添えられたらなおいい。
この軽やかさ、気軽さが、LINEの本当の魅力だと思っています。
教える前に、決めておいてほしい3つのこと
最後に、実際に教え始める前の準備を3つ。
1)1回に1つだけ。2つ教えると、両方忘れます。欲張らないでください。「今日はこれだけ」と決めて、できたら終わりにする。楽しいうちに終わるから、次があります。
2)ノートに書いてもらう。覚えたこと、聞きたいことをノートに書く習慣をつけてもらうと、そこを見返せば済むようになります。日付も入れておくとよいでしょう。
同じことを何度も聞かれる回数が、確実に減ります。お互いの時間を守るための方法です。
3)否定しない。これがいちばん大事です。目的は「一人でできるようになってもらう」こと。そのために、一時の怒りは逆効果になります。
×「ダメだよねぇ・・・」
○「ちょっと難しいからね。またやってみよう。」
何気ない一言が、「一人でできるようになる」という目的をダメにしてしまうこともあります。
教える側(お子様世代)の最大の目的は「親世代が一人でスマホを使えるようになる」ことです。そしてそれができれば、双方にとってメリット大です!!
親子だと、なぜケンカになるのか ― 向き合わず、隣に座る
親子で教え合うのがむずかしいのは、その近さゆえ。そして面と向かって向き合ってしまうからだと思っています。
向かい合うと、どうしても「教える人」と「教わる人」になって、そこにこれまでの親子の歴史が全部乗ってきます。あの時こうだった・・・こんなこともあった・・・なんて(笑)。
だから、面と向かって向き合うのではなく、隣に座るぐらいがちょうどいい。そして、二人のあいだに何か置いてください。本でも、ノートでも。
間に何かを置くと、「なんでできないの」ではなく「じゃあ、ここに書いてあるから見てみようか」になります。「この間ここに書いたから見てみようか。」になります。
あ、もしよかったら本はこちらをお使いください(笑)。
私こんな本も書いております。
▶ 『世界一簡単! 70歳からのLINEの使いこなし術』のご紹介
面と向かうのではなく、親子で同じ方向を向く。そうすると責める相手が、物理的に目の前にいなくなります。
「これわかりにくいよね」「これ紛らわしいよね」と、文句はスマホに向かって言えばいいのです。共通の敵、みたいな。
いや、実際には「敵」ではなく「相棒」になる存在なのですが、親子の前に立ちはだかるのは、お互いではなく「スマホそのもの」という構図の方が、うまくいきます。
次回から、実際の教え方をひとつずつ書いていきます。まずは「LINEの友だちになる」ところから。ここでつまずく親子が、いちばん多いのです。
▶ 次の記事:親にLINEを教える(1)LINEを入れる ― 友だちがいなくても練習できます
この連載の記事一覧
- 高齢の親にLINEを教える前に ― 質問してくれる今が、いちばんのチャンスです(この記事)
- 親にLINEを教える(1)LINEを入れる ― 友だちがいなくても練習できます
- 親にLINEを教える(2)友だちになる ― QRコードと招待、つまずくのはここ
- 親にLINEを教える(3)メッセージを送る ― 「拝啓」は必要なし
- 親にLINEを教える(4)無料通話とビデオ通話 ― 難しいのは「かけ方」より「出方」
- 親にLINEを教える(5)グループ ― 入力なしでも返事ができます
- 親にLINEを教える(6)写真 ― 送り方と保存
- 親にLINEを教える(7)見やすくする ― 通知・ピン留め



