阿部慎之助監督が逮捕された、というニュースが飛び込んできました。
「AI」に関することなので、私も授業の前にこのお話をしました。
報道によると、18歳の娘さんがお父さんとのトラブルのあと、ChatGPTに「どうしたらいいか」と相談。
AIから「匿名で相談できる児童相談所がありますよ」と案内され、そのまま電話をしたことで、結果的に逮捕につながったとされています。
よく「AIが賢くなって、いずれは人の仕事を奪うのでは」と言われてきましたが、今回はこんな形で、AIが巨人軍監督の職を奪うとは・・・。
このニュースに対して、「娘が悪い」「AIが悪い」という声もありますが、私はそこに焦点を当てたいわけではありません。
報道だって偏っている場合もあるし、当事者にしかわからない部分も多いですから。
私が気になったのは、もっと身近なことです。それは
「あなた自身のAIの使い方、大丈夫ですか?」 ということです。
AIはとても便利です。
質問すれば、すぐに答えが返ってきます。
最近ではすっかり市民権を得て、誰でもAIを使えるようになり、ちょっとしたことはAIに聞いて解決、なんてことも増えてきました。
でも、その答えが「あなたにとって正しいかどうか」は、また別の話です。
今回の騒動から学べることを、3つにまとめてみました。
AIの答えは、あなたの「聞き方」しだい
AIは、あなたが入力した情報をもとに答えを返します。
あなたが入力した情報がスタートになる。
もし、あなたが伝えた内容が偏っていたり、大げさだったり、一部しか伝えていなかったりすれば、当然答えも偏ります。
たとえば「隣の人がうるさくて迷惑している」とAIに相談するのと、
「隣の家から、最近夜10時過ぎになるとテレビが大音量で聞こえてきて、寝つけない日が続いている」と相談するのとでは、返ってくる答えがまったく変わります。
AIは、あなたの「言葉」だけを頼りにしています。
どんな言葉を使うかで、答えの方向がまるで違ってくるのです。
AIは、状況を見ているわけでも、当事者の気持ちを知っているわけでもありません。
だからこそ、AIに相談するときは「自分の伝え方は正確だろうか」と、一度立ち止まることが大事です。
AIの答えを判断できるのは、あなた自身
今回のケースでは、AIが「児童相談所に匿名で相談できます」と案内しました。
でも、AIは
「相談内容によっては警察に通報される」
「場合によっては公になる」
というところまでは教えてくれなかったようです。
まさかお父さんが巨人軍監督だなんて、AIは知らなかったかもしれません。

先ほどの例で、AIに「毎晩テレビの音がうるさくて眠れない」と相談したとします。
AIはこんなふうに答えるかもしれません。
「管理会社に連絡しましょう」
「自治体の相談窓口に電話しましょう」
「警察に相談する方法もあります」。
どれも、間違ってはいないし、手順としては正しいかもしれません。
でも、もしお隣さんが、耳が遠くなったおばあちゃんで、20年来のご近所さんだったらどうでしょう。
そうなると、いきなり管理会社に連絡するより、まずご本人にやんわり声をかけるほうがいい場合もありますよね。お付き合いがあるなら、ご家族にそれとなく相談してみるとか。
AIは確かに手順を教えてくれます。
でも、あなたとお隣さんの関係までは知りません。
「その先どうなるか」まで見通してくれるとは限らないのです。
AIの答えを受け取ったとき、
「本当にそうかな」
「この通りにして大丈夫かな」と考えられるかどうか。
その判断は、AIではなく、あなた自身にしかできないのです。
ここで大事になるのが「想像力」です。
管理会社に連絡したらどうなるか?
自治体の相談窓口に相談したら、その後どうなるか?
警察に相談したら、その後どういうことが起きうるか?
それをしたらどうなるか、という「想像力」がものすごく大事です。
そして「やっていい」のか「やらない方がいい」のかを判断する力。
人間の側に、そういう力量がないと、AIの回答を適切に判断することができません。
それには知識が必要です。
何でもAIが正しいわけじゃない。
いつも最適解をAIが出してくれるわけじゃない。
ひとつの答えで決めない、がAI時代の鉄則
AIに相談して、返ってきた答えをそのまま実行する。
これ、意外とやっている方が多いのではないでしょうか。
例えば先ほどの例。
AIに「管理会社に連絡しましょう」と言われて、そのまま電話・・・しますか?
その前に、たとえば同じマンションの知り合いに
「最近お隣さんのテレビ、気になりません?」と聞いてみたらどうでしょう。
「あのおばあちゃん、最近ちょっと耳が遠くなったみたいよ」と教えてくれるかもしれません。
お付き合いがある、おばあちゃんのご家族に、それとなく近況を伝えてみる。
「え、そんなことが。申し訳ありません、今度母の家に行ったときに、テレビの音確認してみます」となるかもしれない。
お隣さんのお友だちにちょっと聞いてみたら
「最近聞こえが悪くなったって言ってて、今度、補聴器にするらしいですよ」
なんて情報が入ってくるかもしれない。
AIには出せない答えが、人とのやりとりの中にはあるのです。

人間に相談するときだって、ひとりの意見だけで大事なことを決めたりしませんよね。
別の友人に聞いてみたり、家族に話してみたりするはずです。
AIも同じです。
ひとつのAIの答えだけでなく、別のAIにも聞いてみる。
そして何より、身近な人にも相談してみる。
AIは「相談相手のひとり」に
この3つ、振り返ってみていかがでしょうか。
- AIに正確な情報を伝えていますか
- AIの答えを自分で判断できていますか
- ひとつの答えだけで決めていませんか
「AIってすごい」
「AIに聞けばなんでもわかる」
「AIの言ったとおりにやれば間違いない」
と思っている方ほど、ちょっと立ち止まってほしいのです。
AIは道具です。
とても賢い道具ですが、あなたの状況をすべてわかっているわけではありません。
今回の阿部監督の騒動は、決して遠い世界の話ではないと思います。
AIとのつきあい方を、あらためて考えるきっかけにしていただけたらうれしいです。

